『タイヤ電池®』プロジェクト始動

エコロジー、リサイクル、サステナビリティー(持続可能)が、全ての会社に要求される時代となりました。本プロジェクトは、使用済みタイヤを活用し、高容量蓄電池を低コストで造ることをテーマに、2012年から研究を行って参りました。
そしてついに、使用済みタイヤの熱分解残渣物から蓄電池の電極素材(正極材・負極材・導電材・活性炭)を、低コストで製造する技術を解明しました。しかも、使用済みタイヤの30%~50%が電極素材となり、残りの成分は地上資源やエネルギー源として再利用できます。
蓄電池を作るための「原料」と「燃料」がタイヤからということです。
日本では、国家戦略として2020年までの蓄電池の方向性と、2030年へ向けた革新的蓄電池開発を重点項目に掲げ、関係機関や関係企業で盛んに研究が行われておりますが、安全性・効果性の観点から、全てバージン原料を中心とした研究になります。
本プロジェクトのような、持続可能なリサイクル原料を使用した例はありません。
世界初 『タイヤ電池®』について
使用済みタイヤを熱分解した残渣物からは、電極用導電材・電極用活物質・キャパシタ用活性炭・FC金属触媒用担持体などの原料、使用済みタイヤを熱分解して分離された乾留ガスは、重油及び天然ガスとして燃料(加工熱源)やCNT・CNFなどの原料として、資源循環型のリサイクルを行うことで、再生することが出来ます。
これら使用済みタイヤ(硫黄を含有するゴム類を含む)が由来のリサイクル素材を使用して、各種電池や電子部品の部材に応用した、製品や商品の総称が『タイヤ電池®』になります。
100ワット時クラスの容量を有する、環境負荷の少ないリチウムイオン二次電池の試作1号機を、完成させました。
※ 現在は、リチウムイオン二次電池(LiB)及びキャパシタの研究・開発を、主に進めております。
『タイヤ電池®』の優位性
一般的なリチウムイオン二次電池の正極材には、コバルトやマンガンなどのレアメタルが使われておりますが、タイヤ電池の場合はレアメタルを使わない方針で、研究開発を進めております。
- 安定供給
- レアメタルを使用しませんので、日本に自動車タイヤが存在する限りは、安定した電極材料の供給が可能です。
- 低価格
- 負極材を含めて、電極材料の価格は未定ですが、『タイヤ電池Ⓡ』プロジェクトのスケールメリットを想定すると、従来からの材料よりも低価格でご提供することが可能になります。
固体電解質、硫黄系正極材、炭素添加剤、低温充放電特性、などの研究・試験も行っており、使用可能温度域が広く、燃えない(燃えるリスクが非常に少ない)蓄電池の製造を、目指しております。
『タイヤ電池®』に使われる原料

日本において、使用済み自動車タイヤの年間排出量は約100万トンあり、そのうちの60%がセメント製造工場や製紙工場などの“熱エネルギー源”などに再利用されています。
残り40%のうちの5%~10%にアップサイクルを目指した、高付加価値なリサイクルシステムを目指します。
タイヤを構成する物質は、ゴム、カーボンブラック、スチールワイヤー、加硫材(硫黄)、シリカ、オイル、プラスチックなどの素材になります。
使用済みタイヤを活用して、“資源循環型リサイクル”を行うことで、炭化物、油、燃焼ガス、鉄などの、地上資源やエネルギー源が得られます。

『タイヤ電池®』電極材の原料になりますのは、使用済みタイヤを熱分解した、カーボン残渣物と様々な元素になります。
このままの状態では、蓄電池の電極として使用できませんので、活物質に改質させる必要があります。
『タイヤ電池Ⓡ』の電極素材製造

電極素材の生産を担当して頂く、東京炭素工業(株)様の千葉工場に創設しましたパイロットプラントにて、研究・開発を目的に、電極素材の製造を行っております。
現在は、負極活物質の製造のほか、導電材や活性炭の製造も可能であり、今後製造プロセスを増やすことにより、正極材の製造も予定しております。
炭素の結晶形態は、プラントの制御方法などを工夫することにより、色々な構造の炭素がつくれることを確認しています。

二次処理装置にて精製等を行うことにより、さらに蓄電池の電極材に適した性質を、付与しております。
※公益財団法人 東京都中小企業振興公社 平成27年度ものづくり企業グループ高度化支援事業 採択

現在の研究結果では、タイヤ重量の約20%が、リチウムイオン二次電池の負極材として、製造可能です。
自動車タイヤ4本の重量が合計で40kgあるとすると、資源循環型のリサイクルを行うことにより、約8Kgの負極材に生まれ変わります。
導電材・活性炭・正極材を合わせますと、使用済みタイヤの30%~50%が電極素材になります。

ラボでのR&Dはコインセルにて、評価試験および実証試験は、ラミネート型リチウムイオン二次電池にて、行っております。
■ タイヤ電池(LiB)に搭載される素材の例
- 正極集電体:正極活物質、正極導電材
- 負極集電体:負極活物質、負極導電材
- 炭素添加剤:CNTまたはCNF
『タイヤ電池Ⓡ』の実証試験

電極素材の生産を担当して頂く、東京炭素工業(株)様の千葉工場に創設しましたパイロットプラントにて、研究・開発を目的に、電極素材の製造を行っております。
現在は、負極活物質の製造のほか、導電材や活性炭の製造も可能であり、今後製造プロセスを増やすことにより、正極材の製造も予定しております。
炭素の結晶形態は、プラントの制御方法などを工夫することにより、色々な構造の炭素がつくれることを確認しています。

昼間は、ソーラーパネルと風車で発電をして『タイヤ電池』に充電、夜間は『タイヤ電池』に蓄めた電気をつかい街路灯を点灯させて、問題なく稼動することを確認しました。
第8回二次電池展に出展しました
2017年3月1日~3月3日、東京ビッグサイトで開催されました、第8回 [国際]二次電池展 ~バッテリージャパン~に、出展いたしました。
『タイヤ電池®』の将来性
使用済みタイヤを活用し、資源循環型リサイクルにて再生した素材をつかい、バッテリーやキャパシタに搭載した製品や商品が『タイヤ電池®』です。
リチウムイオン二次電池の負極材は、一般に天然黒鉛の粉末が使われておりますが、当社プラントにて炭素結晶構造の発達度を制御して負極材を製造することにより、バージン原料を使用した蓄電池よりも、低コストでつくることが将来的には可能です。
『タイヤ電池®』1号機は、リチウムイオン二次電池の負極材に使用しておりましたが、正極材の研究開発を鋭意進めておりまして、
『タイヤ電池®』2号機には正極材と負極材を搭載する予定です。
燃えない電池を目指しておりますので、今後の研究開発によりエネルギー密度やサイクル数などの性能が飛躍的に向上しますと、EV(電気自動車・電動バイク)やFCV(燃料電池自動車)に搭載できる可能性も秘めております。
リチウムイオン二次電池のほか、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)の電極材(活性炭)としても利用可能であり、ナトリウムイオン二次電池の電極材の研究も行っております。
『タイヤ電池®』ビジネスモデル
役割を終えた使用済みタイヤに、次なるエネルギー社会を支える『タイヤ電池®』という、究極の姿のリサイクルをご提案させていただきたく、タイヤ関連事業者のご協力を得ながら、タイヤのエンドレスなビジネスモデルを創造・構築して参ります。
また、タイヤ業界に関連する企業様にご参加いただくための『タイヤ電池®』プロジェクトの創設準備委員会も検討しております。
進捗にあわせてご案内させていただく所存でございますので、宜しくお願い申し上げます。
なお、本プロジェクトは会則に基づき運営され、事業所(事務・製造)は東京炭素工業株式会社、研究・開発は株式会社ルネシスで行われます。
日本の明るい蓄電池ビジネスのスタートを、皆様と進めて参りたく、ここにご挨拶申し上げます。